sobbing

今日は、ある区切りの日。大学の春学期(そのほとんどが冬の気温であったことなど、誰も意に介さない)の授業が終わった週末、というのは単なる偶然だ。それで、この区切りに多少とも関係のある「泣き」に関して何か書いてみようと思う。で、私はあまり泣かないのだが(それも歳と共に変わってきたのではあるが)、それでもまったく泣かないわけではなく、泣くことで何らかの共通点が見いだせるものが、「本何冊か」、なので、自分が泣いた本をここに書いてみようと思う。
ちなみに、なんの区切りかは気にしないでくれ。ここで説明したくないし、説明されても困るであろうから。


アンクルトムの小屋 (少年少女世界名作全集)

アンクルトムの小屋 (少年少女世界名作全集)

  • 作者: ハリエット・ビーチャー・ストウ,香川茂,Harriet Beecher Stowe
  • 出版社/メーカー: ぎょうせい
  • 発売日: 1995/02/01
  • メディア: 単行本
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小学生の時、唯一泣いたのが、ストウ夫人の『アンクルトムの小屋』。読んだのはこの本自身ではなく、子供用に短くされたもので、それがどのようなものであったか覚えていないために、仮にとしてこの本を挙げておく。しかも誰かから借りたという記憶があるので、たとえ家に帰ったとしても、家に無いのだ。
基本的に、一度泣いた本は二度と読まない傾向にあるので、実はほとんど内容を覚えていない。最後に、トムを愛していたかつての所有者の息子が、トムをやっと探し当て、たどり着いた時、ほんの数日前にトムが亡くなっていた、という結末が、子供心に悲しく、泣いたものと思われる。
それ以来、人間がある種の人間を「劣等」と位置づけ、「家畜」として扱う(奴隷は極論すればそうだろう)こととは、いったいどういうことなのか、ということを、奴隷という言葉が表れるたびに考えるようになった。
しかしながら歴史学をやっていると、しかも中世史だったりすると、奴隷なんてわりとありきたりに出てきてしまい、「ふむふむ、このクラスの人間だと、この広大の土地で家畜の放牧するのは奴隷だよな」と、たいした感慨もなく通過してしまうようになってしまった自分が、ちょっと寂しい。
大体、初期中世のアイルランドにおける財産の物差しは、「女奴隷」なので、法律文書を読んでいると、普通に出てきてしまうのだ。「○○した場合、被害者に対して8『女奴隷』を賠償する」とかになるのだ。
中世と近代の奴隷というのは、なにかが違う、と時々自分に言い聞かせていたりする。


アルジャーノンに花束を

アルジャーノンに花束を

いわずとしれた名作。ジャンルとしてはSFとされているが、そういうレベルで量るべき書ではないと思う。読んだのは中学か高校の時。これも借りて読んだ。一人称の日記風、という形式はおそらくその時始めて読んだ形態だと思う。
最初は非常に読みにくく、途中から、つまり句読点を付けだして、漢字がある程度出てきたあたりからスピードアップ、そして「あ、なんかヤバそう」と思うとおりの怒濤の展開で経て、想像通りの結末へ。
想像通りの結末でありながら、私を号泣せしめたのは最後の一文。それを読み終えた瞬間は、ボーッとして、泣くとか、読み終わったという満足感とか、そういうことはとりあえず思考の外側にあった。
今でも思い出すのは、読み終わった少し後に夕食の時間になり、ご飯を食べ出していきなりその最後の一文を思い出し、涙が止まらなくなったこと。その時は確か母と二人で食事をとっていたのだが、相当気味悪がられた。説明しようもなく、「悲しい本を読んだ」とだけ言ったが、「悲しい本」というのともちょっと違うのだよな。
これで、「ダニエル・キイスは天才!」と思い、『五番目のサリー』、『24人のビリーミリガン』と続けて読んだが、ここで「天才とは違うらしい」と気づいて、以後読むのを止めた。そして現在では、「多重人格」という精神疾患自身が、いろいろと疑問を呈するようになっているアメリカ。「SF作家」として続けてくれれば良かったのに、とは思うが、本人はおそらく「SF」を書いた、つもりではないのではないかと想像する。


ノラや (中公文庫)

ノラや (中公文庫)

内田百
とりあえずノラがいなくなった後の百輭のダメダメぶりと、その後に飼ったクルツの最期、この二つで号泣。しかも通勤電車の中で号泣。多分、百輭としてはこれが一番人気がある(だろうな)作品とされていることは、遺憾であろう。


映画についてちょっとだけ。
泣いた映画って無いかな、と考えて、思い出せたのは「ひまわり」だけだった。ソフィア・ローレン、ロシアの電車の中で号泣。私も一緒に号泣。戦争とはひどいものだ、と思った。ああ、あのテーマ曲が頭の中に流れる・・・。

ひまわり《デジタルリマスター版》 [DVD]

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