アイザック・アシモフ 『はだかの太陽』

はだかの太陽 (ハヤカワ文庫 SF 558)

はだかの太陽 (ハヤカワ文庫 SF 558)


まったりな四連休の初日に再びやってしまった読書。自分で自分に言い訳で始まってしまう・・・。
アシモフのロボットもの長編の第2弾。自分にはやはりアシモフのロボットものはイマイチ、と感じさせてくれた。今回は全作と違って初めからミステリー(SFで)を書こうとしているのは分かった(さらに私はミステリーも苦手であった・・・)。前作と同じ刑事が、前作と同じロボット、Rダニールと共に、地球外の、ほとんどがロボットしかいない星で起きた殺人事件を調査。関係のありそうな人間に一人一人尋問する様子が、まさに刑事探偵ものそのもの。しかも密室トリック系。
内容如何よりも、アシモフの強烈な皮肉が面白かった(後書きー関口苑生ーでは警句、と書かれているが、私には皮肉に思われた)。地球人である刑事の異常なまでの広場恐怖症。太陽の光よりも人工の光を好み、それによって太陽でできたくっきりの影に怯えたりする。広すぎるベッドのために、潜り込んだ感じがしなくて不安で眠れない。飛行機に窓があるだけで調子が悪くなって、頭を抱え込んで窓を見ないようにする等々。今の人間から見れば異常。
そんな彼と対峙する被尋問者たちもかなり変。広いところにいることにはなんの問題もないが(すでに「広いところが平気」なことがちょっと変わっている風に感じられてしまう)、人と直接に会うことを極度に恐れる。何もかもが細分化された「専門職」を持つロボットによって世話をされる、「会いに行く」が完璧な脅迫となれる世界。子供の育成も基本的にはロボット。人に直接会わざるを得ない医者や「助産婦(作中では「胎児技師」、実際に母親は妊娠1ヶ月で子供を取り出して、あとは機械で育てる)」はあまり尊敬されない職業となっている。
アシモフ風な、これからの社会の文化、あるいは、このままの社会が進んでいった結果の提示、とも言えるが、このあたりの描写が私としては楽しくて、クスリとする場面が多かった(作者のねらい所ではないだろうけど)。
あるいは、アシモフが提示したものは、人間の適応力の柔軟さ、なのかもしれない。現代の人間の「常識」も「感覚」も過去から見れば異常に感じられるだろうし。
最後に刑事が、たった数日の異文化体験で、これまで正常と感じられていた地球の世界に小さな違和感を感じ、「このまま閉じこもっていてはいけない」と、さらなる文化的進化を遂げよう、という目標を持って終わったところは良かった。
これで次作の『夜明けのロボット』に続くのかな? これはさすがに夏休みにはいるまで読まないようにしよう・・・。