されど罪人は竜と踊る 2巻 

されど罪人は竜と踊る 2 ~Ash to Wish~ (ガガガ文庫)

されど罪人は竜と踊る 2 ~Ash to Wish~ (ガガガ文庫)

相変わらずなかの悪い二人の、日常におけるのと同じように戦闘中にも交わす相手へのひどい言葉(それでもあまりの美貌にほとんどすべての女性が惚れてしまうギギナの美しさを心の中で描写してしまうことは忘れない)と相反するような息の合った戦いぶり。今回はさらに商売敵たちとも手を組んで、切り込んでいく前衛のギギナの(本人は気がついていないという設定ではあるが)献身的な戦闘と、良い意味で腹黒で卑劣で主人公チートを合わせた後衛のガユスの頭脳プレイと何もかも持って行ってしまう最強(本文中では「禁忌」)の術×2。
敵の正体が実はアレ、というのには途中で気がついてしまったのが残念。
世界観やら主人公たちやらの中二病的設定は置いておいても、相変わらず言葉が多すぎではあるが政治的背景は好み。社会的地位は底辺に近い政治的には全くの無力の二人、対、国家の最高権力の一翼を担いその勢力の大きさとそれに伴う社会的責任と国家のために無慈悲となるも厭わない人物との、主人公たちが感じる敗北感に似た感覚は共感ができてしまう、そういう背景が華麗なる中二病舞台の背景にあるところがよい。


で、赤い指輪がどういう状況で渡されたのか忘れてしまったので、1巻を読み直すという状況。三回目だよ、アホだな。

されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫)

されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫)

ブラッド・ソング・戦士の掟

ブラッド・ソング2 戦士の掟 (ハヤカワ文庫FT)

ブラッド・ソング2 戦士の掟 (ハヤカワ文庫FT)

やっと読み終わった。何故か途中で読むのを止めていた。
主人公は1巻目より少し大人になった。若くして伝説の戦士になったが、老獪な国王の手先となる運命になったところで読み進めるのが嫌になった。
1巻の最初を思うと、ただの人殺しになりたくなかったのに、というのが透けて見えて。


さて。3巻目を本屋で見つけられるといいな。

三国志(2)

三国志 第二巻 (文春文庫)

三国志 第二巻 (文春文庫)

後漢王朝は外戚の専横とその後の宦官の天下により完全に腐り果ており、搾取された人びとによって黄巾の乱が起こる頃、曹操孫堅が小役人や大将軍の麾下で頭角を現し始める。劉備は彼の才能を高く買った金持ちより大金を授けられて仲間を集め始めた後の情報がないな。ちなみにそのころ諸葛亮はまだ赤ちゃん。
三国志をほとんど知らない私でも知っている董卓がのらりくらりと軍を動かしているところで終了。先の見えた帝国のために命を落とす必要性を感じていないところが、新時代の幕を引く役割を歴史に与えられた存在かなぁ、と。
ともかく「義」ということに重きを置く宮城谷節なので、後漢後期から末期にかけての皇帝に対する評がかなり辛い。

[本Game of Thrones、三国志(1)

A Game of Thrones (A Song of Ice and Fire, Book 1)

A Game of Thrones (A Song of Ice and Fire, Book 1)

私が持っている版とちょっと違う表紙だが。海外の本はいろんな出版社からいろんな表紙で出されるようなので、amazon Japanで検索しきれないことも多い。
ハヤカワ版は
七王国の玉座〈1〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

七王国の玉座〈1〉―氷と炎の歌〈1〉 (ハヤカワ文庫SF)

古いバージョンだと5冊もあるのかよ! 驚愕。
再読。
かなり前に再読し始めたのだが、ある事件がきっかけで子供たちがどんどんひどい状況にはまっていくことが分かっているので、その事件が起こり始めたところで読むのを止めたまま放置しまくっていた。
『ブラッド・ソング』を読んだら重厚ファンタジー熱が上がったので、続きを読むことにした。しばらくはずーっとSF状態だった。
細かい部分は覚えていないがこの巻はおおよその話は覚えていた。相変わらず子供たちの年齢の幼さに反してかなり大人な部分が、ある意味「リアル」なんではあるが、大人たちの子供たちに対する、現代から見れば冷淡ともいえる振る舞いも、「リアル」な部分なのかもしれない。庶子(Jon)の報われなさとか、かわいくて従順でそこそこの頭が必要で上品な振る舞いができればいい、みたいな女の子(特にSansaとか。しかも11歳で婚約とか)に対する評価とか。でもJonは比較的恵まれているように感じたのは、これまでの感想と違うかな。おそらくこの子が一番父親(本当の父親かどうかもはっきりしないんだけど)に似ているのかもしれない。
さて、残りをすべて再読し数年前に出た新刊(もうすでに新刊ではない状態だ)にたどり着くのはいつだろう。デカイし知らない単語はひょこひょこ出てくるしで外にもって読める本ではないから家でしか読めないし、家で本を読む時間も限られるからな。



三国志 第一巻 (文春文庫)

三国志 第一巻 (文春文庫)

全部出たら読もう、と思って4巻までしか持っていないんだが、十数巻とかでてるんだけどどうしよう。
三国志、ということだが、極端に言えば後漢の初めから。光武帝の名前もチラチラ出てくる。本筋は光武帝の曾孫当たりからだが、その当たりから後漢が政治的に混乱し始めるところ、だからこの時代から話を始めているようだ。宮城谷昌光的には三国志演義ではなく、本筋の三国志を下敷きにしたいからのようで、それだと実際に三国志の例の三人というか四人というか五人というかが同時代的なのはほんの数年にすぎないため、というのも理由のようだ。
本巻の後半でようやく曹操の祖父(宦官だが)がひょこひょこ出てくるくらいか。
外戚による実際の統治というのは日本史でも普通の話だが、後漢では外戚というのは皇帝の母方の祖父ではなく、前皇帝(あるいはその前の皇帝)の皇后(皇太后)と(その兄弟)いうことになるようだ。三代にわたって皇太后による摂政政治が行われており、その三人目が善政を敷いているのに自らの兄弟によって政治的に歪みが生じてくるところで1巻は終了。
日本では天皇になってしまえばほとんどが殺されることはないようなイメージ(上皇にさせられてしまって政治的には無力化されることが多い。数人が島流しにされるので、島流しはアウトロウ化されるから殺される可能性はあるが。皇子の時点では殺される可能性が大)だが、どうも「病死」としているが皇帝は実際には殺されたんじゃないかー、という短命の皇帝が多すぎる気がする(ここまで殺された皇帝は始皇帝の後継を含め三人しかいないことになっているが)。だから皇后が実権を握る(皇嗣が幼児だったり子供だったりするから。または、皇嗣を敢えて子供にするとか)訳だが。そして政変が起こったり皇帝が代替わりしたりして親政を始めると、それまでの皇太后一族とそれに連なる官僚や宦官がことごとく殺されるという、中国帝国の恐ろしさよ。
帝国が革命で変わるときにもそれまでの皇室が滅されるし。
しかし人名が多すぎるし読めない漢字も多いしで続けて読まないと大変なことになりそうだ。

ブラッド・ソング・血の絆

ブラッド・ソング 1 血の絆 (ハヤカワ文庫 FT)

ブラッド・ソング 1 血の絆 (ハヤカワ文庫 FT)

王道ファンタジー
あまりの強さによって王国にとっては英雄であり、敵にとっては憎んでも憎みきれない主人公が、捕虜となりどうやら何かの裏がありそうな「決闘」のために船に乗せられ、その結果による彼の死を目撃しようとする王史編纂者に対して、少年時代からの話をする、という体裁。
父親に半分捨てられるように騎士団に引き渡され、家族を捨てて騎士団のメンバーのみを家族「ブラザー」とすることを余儀なくされた少年が、厳しい訓練と「試練」によって仲間を失いつつも成長していく姿が描かれる。(それゆえに「血の絆」という日本側がつけた副題に違和感ありあり。血の繋がりのない者たちの絆の話なのに)
という感じのことが本自体にも書いてあるが今のところこれ以上のことは言えないのが残念。トリロジーの1冊目をさらに3分割にした1巻目であり、2巻及び3巻は今年の夏頃までに出る、という状況で、本家のトリロジーも三部目はまだ出版されていない、となると全部読み終わるのにどれぐらいの時間がかかるのかしら〜。原書に手を出してしまいそうになるのをぐっと堪える。
衣鉢を継ぐ、とされたマーティンの「氷と炎の歌」の原書の読み直しをしているさなかでちょっと無理だし。まあ、楽しみに待ちましょう。伏線もたくさん貼られていることだし。

百万年の船(3)、されど罪人は竜と踊る

百万年の船〈3〉 (ハヤカワ文庫SF)

百万年の船〈3〉 (ハヤカワ文庫SF)

後半にはいるとようやっとSFになる。すべての人びとが不老にしてほとんど不死の状態の恩恵に与るようになった世界で、もともとの不死人8人はその世界に違和感を感じるようになり、宇宙船で違う新しい地球を求めて旅立つ。
宇宙船の中での濃密な関係なることによる軋轢やら何やらでようやく知的生物のいるある世界でとりあえずの暮らしをするが…。
終わりがいまいちよく分からない。タイトルと係わり合いになっていることだけが分かる。どうやら私は他の本の内容とごっちゃになっていたようだ。作者は一緒だが、私が覚えていたと思っていた話は『タウ・ゼロ』だったのだ。衝撃的。そして『百万年の船』の終わり方はまったく覚えていなかったので、ある意味衝撃的というかSF的な読者放りっぱなしな終わり方だったのだ。ちょっと残念。


されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫)

されど罪人は竜と踊る 1 ~Dances with the Dragons~ (ガガガ文庫)

これは先月読み終わっていたのに書くのを忘れていたのだが、春に読んだものの再読なのでかなり覚えておった。なんとなく作り込まれた中二病的作品を読んでみたかっただけなのだ。
日常生活では冗談ではないほどの仲の悪さと罵詈雑言を送り合う二人が、戦闘中は非常によくできたコンビネーションを発揮する、というのも中二的でよろしい感じだ。化学(一部物理も。ただし、物理はちょっと作り込みの甘い使い方)的なガゼットをまくり立てるところも文系にとってはかなり魅力的であった。

百万年の船(2)

百万年の船〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)

百万年の船〈2〉 (ハヤカワ文庫SF)

二巻目。不死の女性三人の生き方が対照的。一人は一巻の最後で裏切りを働いた女性で千数百年間、生きる糧を自ら体を売るか売春宿を営むかだけで得ていた。何かこれといって貢献することもせず、自らに価値を見いだしていない。ある一人は千年近い人生の前半は男性の保護と主導院の保護の下生きてきた後、モンゴル軍の侵略以降は(ほとんど書かれていないがおそらく)何かのために立ち上がり、戦って生きてきた。自らの人種の権利を守るために。もう一人はアメリカに連行された父親を持つ黒人奴隷。自力で農場から脱走し、奴隷解放論者たちの援助のもとにカナダへ逃亡後、働きながら勉強をし、貧しく虐げられた人たちの自助組織を運営するようになる(後に売春だけで生活していた仲間を自分の右手にすることによって、彼女に生きる意味と自らの価値を与えることになる。)
不老であり限りなく不死に近い人たちが、愛する人たちと子供たちや孫たちの死を乗り越えながらそれでも生きようとする場合、どのように生きるかはその人のキャラクターによることがよく分かる。まあ、二人目の場合、13世紀から次の登場が第2次世界大戦なので、その間どうやっていたのかいまいちよく分からないのではあるが。
しかしここまではまったくもってSFではない。